みんなDrコトーを望んでいる

田舎でもいいから、医者になって、医療にまじめに取り組みたいという人を医学部に優先的に入学させる手だてはないものか、とふと思った。

田舎の医者不足は相変わらずだし、薬剤師も、地方では不足していると聞いた。みんな都市部に集中している。先日、福島県で開業されている眼科医の先生と話す機会があったが、福島でも、ほんのちょっと都市部から外れると深刻な医師不足が問題となっているとのことだ。福島県医大では、研修医として母校に残る者が6人しかいないこともあったらしい。みな、東京などで研修して、そのまま、都市部で生活するようだ。

医学部に進学する集団が、特定の社会階層に限定されつつあることが、田舎での医師不足に関係しているのではないか。つまり、経済的に恵まれた、都市部の裕福層で、子供の知育教育にお金をかけられる階層出身の子供だけが、私立に限らず、旧国立や公立の医学部に進学できる現状は、やはり、偏っているとしか思えない。裕福層に医者が多いということも関係しているのは明らかだが。日本の地域医療はこれから先、厳しいものがある、なんせ、田舎で勤務する医者がいないのだから。

腕におぼえのある秀才達は、旧国立の医学部に入るために、日本中を移動することを厭わない。だが、卒業後は、さっさと、出身の都市部に帰っていく。これでは、田舎で診療する医師がいつまで経っても育つはずがない。この状況をこれから先も続けていくのであろうか、厚生労働省は。自治医科大学が、地域医療の支えになっているとは言い難いが、自治医科大学一校に田舎の医師不足を負わせるには無理がありすぎる。

医学者である医師を我々は望んでいるわけではない。より身近な存在としての「お医者さん」であって欲しいのだ。最近、都内でニセ医者が逮捕されたが、患者のひとりは「話を聞いてくれるいい先生だった」とコメントしていた。ニセ医者の方が、医者として望まれることをしていた、と言う皮肉めいた話だが、これこそが真実なのだと思う。

医学を志す人達が、特定の地域に居住する、特定の社会階層に偏らず、より多様性のある人々で構成されていることが必要なのではないだろうか。そして、地域医療で田舎に埋もれるという暗いイメージを持たせない、卒後教育やバックアップ体制の完備によって、安心して地域医療に取り組める環境を整える必要がある。最近、総合診療科の整備が進んでいるようだが、これも、何でも診なくてはならない地域医療を支える医師の養成には大きな助けとなる。

看護師さんは結構田舎でもいる。医者がいなくても、看護師がその地域の健康を支えているという場合もある。なぜ、医者と看護師で、そんな違いが生じるのか、じっくり考えてみる必要があると思う。

魅力あふれる、凄腕の田舎医者になる若者がもっと増えて欲しい。そう、Drコトーのような。そのために税金が投入されるのなら、文句は言わない。違法建築のために、莫大な税金が投入されるよりよっぽどいい。