医師不足か?

東京で、妊婦が脳内出血を起こし、病院をたらい回しにされたあげく、胎児は帝王切開で救出されたものの、妊婦は亡くなるという、悲しい事件が起こった。

口先だけで、目立ちたがり屋の厚生労働大臣は、妊婦が亡くなった原因の1つである都立病院に乗り込み、いつものパフォーマンスを繰り広げたようだ。

そして、馬鹿の一つ覚えのごとく、医師不足が原因と言ったようだ。

このブログでも、繰り返し、繰り返し話題にしているが、日本国内には50近い医学部があるのだから、毎年、全国で5000人近い医師が誕生しているのだ。

これが、都市部にだけ偏在するから問題なのであって、入学定員を10%程度増やしても、何の効果もないのは、明白であり、学力不良者が医学部に入り込むだけである。

都市部の出身者が、全国の医学部を席巻している現状がある以上、地方の医師不足は絶対になくならない、これは断言できる。

医学部の入学定員を増やしても、首都圏や都市部にある医師の子弟が多く通う進学校の、医学部進学者が増えるだけだろう。

それで、おしまい。

そして、診療科目ごとに勤務内容が大きく異なるという状況が、特定の科を、今回の場合は、産婦人科(たぶん産科)だが、敬遠するということを助長している。

これを改善するのは、無理である。

いくら医師を増やしても、勤務状態が改善されなければ、楽で、お金が儲かる方に流れるのが、人間の性であるからだ。

医者に、聖人を求めることは出来ないのだ。

せめて、他科のバックアップ体制を作り、産科専門医でなくても、ある程度のことは出来る体制を構築できなものだろうか。

医者なのだから、やって出来ないことはないのだ。

外科医が、産科を手伝ったっていいではないか。

内科医が、産科の基本手技位は出来て当たり前という、基準を作ることは無理なことであろうか。

研修において、産科を確実に習得し、あるレベルに達しないと、研修認定しない、ということは無理であろうか。

診療科目にこだわっている限り、現状の改善は不可能である。

いくらお金を積まれても、あの科には行きたくない、と考える医者を説得できる状況ではないのだ。

心配なのは、医学部の入学定員を単純に増やしただけで、医師不足や、医師の偏在に、さも効果があると宣伝されることだ。

今まで、入学が困難だった者が、そして、入学後も、勉強継続に関して多くの困難が予想される者が、入り込んでくることで、医師のレベルや信用が落ちないか、心配である。

いっそ、今の二倍にすれば、あぶれた医師は、地方や他の人が行きたがらない科にも、流れるかもしれないが、粗製濫造された医師が、とんでもないことをやらかす可能性が高くなるだろう。

厚生労働省も、実態を知っているだけに、医師の定員増による対応の限界は、十分に認識しているはずである。

診療報酬の面での優遇、科目による給与格差の実施、科目にこだわらない医療体制と医学教育など、強制力を伴った抜本的改革が必要に思える。

申し訳ないが、医師と医師候補者に、自由気ままな選択を許している限り、そして、特定の高校に医学部が独占される状況がある限り、医師不足?と、医師の偏在は解消できない。

国民は、私学、旧国立に限らず、莫大な税金が医学部に投入されていることを、主張すべきであり、国は、ある程度の強制力を働かせるときが来ていると考える。

そうすれば、医師の適性もないのに、頭の良さの証明や、それに付随する達成感のために、医学部を受験する者も減るかもしれない。

医学部には、人のために働きたい、人の役に立ちたい、という最も基本的な信条がない者は、来るべき所ではないと私は考える。

少しでも、志のある者が医師になれば、少しは医師の偏在も解消が出来るのかもしれないが、人物を見極めることは、恐ろしく困難なことであって、選抜にかけられる時間の制約がある以上、適性のある者をなるべく入学させたい、という大学側の思惑は、なかなか、実現が難しいのである。

医学部が、ある特定の社会階層に支配されつつある現状が、見かけの医師不足や、医師の偏在の原因の1つではないかと、私は考えるのである。