医学と映画

大好きな映画がある。「レナードの朝」(邦題)で、原題は「Awakenings(めざめ)」だ。

医学ものだが、他人に対する愛、深い思いやりに満ちた作品だと思う。

この映画は事実に基づいていおり、治療の見込みが全くないと考えられていた重度の麻痺から患者を救うというものである。この医学上の奇跡(残念ながら一過性のものだった)を記録した本も出版されている。

医学ものをいくつかやってるロビン・ウィリアムスが精神科の医師で、私のお気に入りの俳優であるロバート・デ・ニーロが嗜眠性脳炎におかされ、重度の麻痺で寝たきりの患者を好演している。ロビン・ウィリアムスがやった医者のなかでは、一番いいと私は思う。

可能性を信じ、全力投球で治療に励む医者と看護士、その医者を信じ、実験的治療に献身する患者とその家族、そして、奇跡が起こり、全てがうまくいくように思われたが…。程なく訪れた、絶望、そして、新たな挑戦。

バックに流れる音楽が情感を盛り上げるのにピッタリだ。その音楽を作曲した有名なジャズミュージシャンが患者役として出演し、ピアノを演奏しているのもおもしろい。また、本当の患者さんが出演している点も珍しいことだと思う。

この映画を見て気づいたことは、医療に対する考え方は個人によって大きく異なっているということだった。医療とは、医学とは、という問に対して、決まった答を出すのはむずかしい、と感じた。

病気を直すことは、医療従事者と患者そして患者の家族との信頼関係がいかに大切かを、力むことなく、しっかりと示してくれた作品だと思う。その信頼関係をつくるために必要なことは、思いやりの心であることも気づかせてくれた。