医学はhow toものか?

医学部で教えている知り合いの生化学者がこぼしていた。
「生化学の演習問題の解答の解説をしてもらえればこと足りる」と医学生から言われたと。
受験勉強の延長線上でしか学問をとらえられない学生がいることは確かだが、それだけではないと思う。

基礎医学を演習問題の解答の解説でいい、と言う背景には、ポイントをおぼえその周辺の余分な知識は排除するという要領のよさがあると思う。受験に勝ち抜いてきた者の自信が、そう言わせるのかもしれない。じっくりとものの本質に取り組みたがる理学部の学生からは、決してでない要求だろう。自分であれこれ考えることを楽しむのは医学生には無駄と思えるのか?

基礎医学の教員は応用の利く幅広い確かな知識を授けたいと考えているが、医学生は、使える知識にだけ興味があるのではないか。教員と医学生基礎医学に対する考え方に大きなギャップがありそうだ。日本の医学部は、基本的には臨床医を作ることを目的としているのだが、医学生の中にもいろんな考えを持った者が混在しているので、今回の例の医学生がすべてを代表的する意見とは思えない。

アメリカでは、医学部の中に色々なコースがあり、臨床重視のコース、研究重視のコース、それらの中間的なコースなど、医学生が選択できるらしい。日本の医学部はまだそんな余裕はなさそうだ。きっと、いつまでも、基礎医学の教員と医学生のギャップは埋まることはないだろう。悩ましい問題である。