O-157

阪大の医学部の細菌学実習で、学生がO-157に感染して発病してしまった。

医学はアイロンの効いた純白の白衣をまとい、掃除の行き届いた、清潔で、快適な場所ばかりで行われるわけじゃない。様々な感染症にも対応しなければならない。そのためにも、病原体に関する知識と安全な取り扱い法を医師は身につける必要がある、建前上では。

阪大の教官は、O-157という病原性大腸菌を学生実習に使用することで、学生の病原微生物への認識を高めようとしたのかもしれない(好意的に解釈すれば)。

報道された記事からは、基本的なルールを守らなかったようだが、細菌の専門家ともあろう人たちが、どうしてしまったのか残念でならない。

最近は学生実習で汚いもの(感染性のあるものという意味)を扱うことが制約を受けるようになってきた。バイオハザードという概念の普及と徹底がそれを後押ししている。本来なら、十分に配慮した上で、学生に感染性のある病原体の取り扱いの基本を教えたいのだが、それも、今後はむずかしいだろう。危険なものを使わなくても、同等の教育効果をあげられるより安全なものに置き換えられいくだろう。本物を扱うのと偽物を扱うのでは、かなり教育的効果は違うと、自分の経験から考えてしまうのだが。

では、いったい、どこで、だれが、本物の病原体を正しく扱い、適正な処置をしてくれるのであろう。感染症の最前線に立たされるのは医師であるのに。汚いものから医師は逃げることはできないのに。いや、逃げ出す者も出てくるかもしれない、この状況が続くなら。