医学部になぜ進学するの?

僕は、昨今の医学部が頭の良さを世間に認めさせる場として、特定の社会階層に属する人達に利用されていることに危機感を持っている。東京のある超難関私立中高一貫校は旧国立大学の医学部に何人合格者を出したかを、盛んに宣伝している。医学部は定員も少なく、医師は高度な専門職であり、社会的地位も不当に高いので、その受験に際しては、競争は激化し、極めて高い学力が要求される。医学部に合格することは、自分が優秀と信じている者の自尊心を十分に満足させるものだろう。

競争は避けられないものとは思うが、受験ですごい点を取れることがよい医師になれることにつながるのだろうか?高得点をとる人達の中に病人のことを思いやることができる人間が多く含まれているとでもいうのだろうか?現行の入学試験制度では、医師の適性を評価することは不可能である。医学部にどれだけ、適性のある者が入学しているのだろうか。少なくとも、やる気のある人材であってほしい。有名進学校の進路指導の先生方にお願いしたい。医学部を自分たちの優秀さを証明する場にしないでいただきたい。そして、受験生も、もっと医学を理解した上で、進路を決めてもらいたい。

日本では、18歳には医学部への受験を決めなくてはならない。高校三年生である。人生経験に乏しい彼らに、医学を正面から考えることができるのだろうか。僕は医学部を専門職大学院とした方がよいと考えている。つまり、アメリカ式ということになるが、学部教育を終了した者の中から、適性のある有能な人材に医学部への入学を認めるということである。学部の4年間を知識と人格の熟成に重要な時期と考えているのだ。この時期をいかに過ごしたかで、医学部への入学資格を判断するのがよいと考えている。日本の医療の現状から、今すぐにこの制度を取り入れることは不可能であることも十分承知している。しかし、現行の教育制度では、医学の充実は望めないと思う。

日本は、知識のある医師をどうしたら効率よく育成できるか、ということばかりに気を取られ過ぎている。どうしたら、適性のある者を見出し、医学部に入学させるか考えることが、今必要なのではないだろか。医学教育には学生一人あたりに莫大な税金が投入されていることを一般の人はもっと認識すべきだと思う。お金のある人が勝手にやっていることではないのですよ、みなさん!