双子山な成績分布

非常勤をしている都内某大学の定期試験の採点が終了した。
 
受験オタ(または学歴オタ)の言い方を借りると、いわゆるMARCHレベル以上な学生を集めている学部の学科である。
 
300人以上もいたので、少々面倒だった。
 
成績はEXCELで管理しているのだが、色々といじくり回していて、おかしなことに気がついた。
 
成績分布を見てみると、中間層が少なく、下位と上位が多く、まるで、頂上が2つある、双子山型の分布をしているのだ。
 
いわゆる、2峰性、というやつてある。
 
この結果から、同じ学科に、出来る集団と、出来ない集団が、ハッキリと区別できるということになる。
 
自分の講義科目だけで決めつけるのは科学的ではないが、もし、1つの学科中に、総合的な学習能力とそれに伴う結果に、明確な差がある2つの集団があるなら、今後の教育が、この上なくやりにくいこととなる。
 
どのレベルを対象にして講義や実習を組み立てるべきか、大いに悩むこととなるからだ。
 
本務校の試験結果についても、同様にして眺めてみたが、ほぼ妥当な成績分布であった。
 
つまり、正規分布、という富士山型である。
 
なぜこんな状況になってしまったのだろうか、非常勤の大学は。
 
ちょっと前、その大学で、教員の懇談会があったが、その中でも、学習力?の2峰性の問題を指摘する先生がいた。
 
本来なら、入学する学力や意欲がない者が、大学に紛れ込んでしまった、と考えるべきか。
 
付属校からの進学、推薦入学、AO入試、帰国子女枠など、入試は多様化しているが、多様化した入試の中で、基礎的な学力の判定や、学習意欲などの評価が、適切に実施されているのか、いささか不安なところがある。
 
付属校から進学してきた学生に関して、一般入試で入学した学生の一部から、学習意欲や意識の低さを指摘する意見を、何度となく聞いたことがある。
 
私は、成績差の原因としては、学習意欲、が一番影響しているのではないかと思う。
 
ひとは好きなことは一生懸命やるが、嫌なことは、やらない。
 
当然のことながら、知力の問題と言うより、意欲の問題で、学習に身が入らないのだから、成績もふるわなくなるだろう。
 
以前は、同じ入学定員でも、入試における競争が激しかったので、そこで選択が働き、ある程度学習意欲のある、目的意識の明確な学生を選抜することが出来たのかも知れない。
 
ところが、少子化で競争が緩和されたことで、やや学習意欲に欠ける者が、大学に合格できる状況となってしまった、と考えられるが、どうだろうか。
 
魅力のある大学とか、教員の講義力、教育力、などと、昨今の大学教員は、FD活動による魅力ある教育を求められているが、教員だけに、負担を強いても、それには自ずと限界がある。
 
本来FD活動は、学生の側の学習能力の向上が必須な訳であり、これが果たして適切に実施されているのか、私には、いささか疑問である。
 
日本の教育において、教育格差が驚くべきスピードで進行し、学力を含め、総合的な学習能力(意欲)に関して、出来る者と出来ない者、という風に集団を二分するような事態になりつつあるのではないかと、心配している。
 
何が教育格差(学習力格差か)を生んでいるのか、このブログでもこれまで記事にしてきたが、もう、のっぴきならない状況になりつつあると、試験結果を眺めてみて、心配になってしまった。