こんな本が大手を振って発行されるとは

塾や予備校の全国模試成績優秀者が、日本を切り盛りするエリートと定義する新書(千円もする!)を立ち読みした。
 
タイトルは失念してしまったが、東大というキーワードが入ってたことだけはおぼえている。
 
受験情報雑誌編集者が、東大合格者に関する膨大な資料をまとめたものだ。
 
この御仁、高校別の東大合格者数に関する戦前、戦後(2009年あたりまで)の情報をひねくり回して、適当なコメントを年度ごとに付記して、悦に入っているように読めた。
 
一番腹立たしいのは、全国模試の成績上位者が、今後の日本を背負って立つような、断定的な記述をしているところだ。
 
まさに、受験情報屋らしい、コメントであり、いい歳をしたオトナが、よくもまあこんなことをさらりと書くものだと、思わず笑ってしまった。
 
つまり、この編集者殿がいうところの、学力エリートたちが、東大に入り、高級官僚になって、日本を切り盛りすることを、至極当然として受け入れているのだ。
 
この御仁、今日の日本の混乱と、腐敗しきった官僚政治が、これら学力エリートの関与によるところが大であることを、どう考えているのだろうか。
 
どこの高校は、超学力エリート集団で、早大、慶大を滑り止めにして、東大入学を果たし、そのほかの大学を、虫けららのようにしか考えていない、と都内のある私立女子中高一貫校を、こともなげに記述していたが、そんな偏向的で、金のかかる特別な受験塾にどっぷり浸かった、人格的に問題な子供に、日本の将来を任せたいと思う国民が、果たしているだろうか。
 
この編集者殿は、長年、東大合格者をいじくり回してきたため、物事を学力の優劣でしかはかれなくなってしまったようだ。
 
このような人物が、マスメディアを使って、教育熱を煽り、教育産業に、無駄金を投資させるように、バカな親たちを洗脳し続けているのが、日本の教育の現状である。
 
社会とか、それを構成する様々な階層の人たちへの理解という視点が、この編集者殿には、恐ろしいほどに欠損している。
 
千円もする新書であるが、この手の本が出版される背景には、近頃進行している、学力増進運動(大阪の橋下などがその代表)の高まりに呼応したものと、私は考える。
 
ようは、社会情勢に乗っかって、一儲けをたくらみ、自説開陳の機会を得ようとしているのだろう。
 
社会の現実に目を向けようとしない点が、そして、正しいのは、自分たちであり、そのほかのものは隷属せよとばかりの不遜な態度は、この編集者がいうところの、日本的学力エリートの特徴的精神構造と、私は断じる。
 
戦前も、この学力エリートに、日本の舵取りを任せたのだ。
 
その結果どうなったか、この編集者殿は、少しは近現代史を勉強されているのか?
 
東大、東大、と騒いでいるうちに、浮き世との交通が断たれ、夜郎自大に陥ってしまったのではないか?
 
この編集者殿のような精神構造の者に、また、この人物が賛美する偏向的な価値観に凝り固まった学力エリートに、この国を任せてはならない。