都立高校の復権

都立高校の復権を目指して、大学進学を重点においた改革?が試みられている。独自問題による入試と、進学指導重点校の指定によって、その恩恵を受けたいくつかの都立高校では大学進学実績(つまり東大進学率)が向上したらしい。

確かに、日比谷や西などでは、東大進学者が増加した。ようは、頭の良い子を入学させて、受験教育をキッチリやれば、進学実績は伸びるということだ。ということは、都立高校の復権には、私立に流れている、頭の良い子をひとりでも多く取り込むということが必須となる。毎年、少しずつ東大合格者を増やし、その宣伝効果によって、少しずつではあるが、私立から横取りするというかたちで、優秀な生徒を集めていくのだろうか。

ある教育関係者は、都立の進学指導重点校の一部(日比谷、戸山、西)なら、最大で、東大合格者50人くらいは可能ではないか、と予測している。ただ、かなりの時間を要すると考えているらしい。なぜ、これら3校かと言うと、腐っても鯛、つまり過去の栄光によるブランド力があるかららしい。なるほど、結局はブランドによる人寄せか。東京都も、このブランド利用して、ただの進学校に成り下がってしまった学校をなんとかしようとしているので、その点では、戦略的には大きな間違えはないのかもしれない。

都立の進学指導重点校はいずれも高校からの募集である。大学受験に関しては、中高一貫にした方が有利だ。それをやらずして、大学進学実績を飛躍的に上げようとすることは、かなりの無理が必要だ。その無理に耐えるだけの資質を持った生徒を集めることが、いまの都立高校に可能だろうか。その疑問に答えるように、保険として、都立中高一貫校の設置があるのかもしれないが、都の教育関係者には未経験な領域で、その先行きは不透明だ。

都立といえども、進学校では、その生徒の多くが、塾を経験している。これは歴然としてた事実だ。つまり、経済的に豊かでないと、進学校へは進めないという図式が厳然とあるのだ。この点においては、私立校と何ら変わりはない。ただ、経済的にゆとりが無く、かといって、出来る範囲で最良の教育をつけさせたい、というニーズには、都立高しか選択の余地はない。この種のニーズは、これからますます増えると予想される。社会が上流と下流に分離しつつあるからだ。公教育機関にはこの社会の変化に対応した教育行政を行う義務があることをしっかり認識していただきたい。切り捨てるのは簡単だ。私立にはそれが出来るが、公立は抱え続けなければならないのだ。