TVドラマ「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」

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ガン(正確には線維肉腫)により31歳の若さでなくなった、井村和清医師の遺作「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」がTVドラマ化された。この本を知っている人は私と同じ年代の方が多いのではないだろうか。

私がこの本と出会ったのは、大学生の時だった。たぶん、初版本だったのではないかと思う。この本はそれ以来、ずっと読み続けられているようだ。当時、私は、自分の死を前にしても、医師として立派に生きる井村さんに感動した記憶がある。今はもうちょっと違う角度からこの作品を読むようになったが。

ドラマの感想だが、本の内容に忠実な感じがした。ドラマというよりは、朗読といったほうが適切かもしれない。あまり奇抜な演出がなくてよかった。映画も作られたと聞くが、私は見たことがない。

井村さんの文章には、透明感がある。すべてを達観したかのように感じられるときがある。生きることへの確信を感じる。文章からは、どろどろした生への執着は感じられないが、それがかえって、井村さんの心の奥底にある生きぬくことへの強い決意を示しているのではないだろうか。氏は繰り返し「死ねない」と書き残しているが、そこには氏の夢の実現のために、残された時間の少なさへの嘆きが込められていると思う。

いつまでも、この本が読みつがれ、読者に医療とはどうあるべきか、死を前にしたとき、どう生きるべきか、を考える機会を与え続けてほしい。とくに、医学を志す人や、医学生には一度は読んでほしい本だ。