小沢一郎を「刑事被告人」にした「検察審査会」新たな重大疑惑Ⅱ

今回は、すべて転載記事であることを、始めにお断りしておく。
 
転載、ここから。
 

 
小沢一郎を「刑事被告人」にした「検察審査会」新たな重大疑惑

 三権分立のひとつ「司法権」を持つ裁判所に「検察審査会」という機関があることは、数年前までは誰も気に留めなかった。最高裁の事務総局が管轄するこの組織を有名にしたのは、10年9月、東京第5検察審査会小沢一郎民主党元代表(現「生活の党」代表)の強制起訴を決めたことがきっかけだった。それによって小沢氏は刑事被告人となり、約2年間にわたる裁判闘争に労力を費やした。小沢氏に対する好悪はあろうとも、政権党の実力者が政治活動を制約された事実が、この国の政治に大きな影響を与えたことは間違いない。
 その小沢起訴を決めた検察審査会が「存在しなかった」としたら──。
 情報公開請求を重ねて検審の疑惑を追い続けた『最高裁の罠』(K&Kプレス刊)の著者・志岐武彦氏が、驚愕の資料を公開する(以下の記事、参照のこと)
 


 私の手元に、2種類の書類の束がある。本来ならば2種類が存在すること自体がおかしいのだが、それに気づいたのは、昨年末に上梓した『最高裁の罠』の膨大な資料を整理していた今年初めのことだった。

 書類とは、私が11年11月に東京第5検察審査会に情報公開請求し、12年2月に開示された2010年分の「東京第5検察審査会の審査員候補者名簿」の複写だ。

 これを請求した理由は後述するが、名簿は請求者を小馬鹿にするかのように全面的に黒塗りされていたため、資料としては役に立たないと思い込んで、当時は注意深く見ることはなかった。

 だが、改めてチェックすると奇妙な点に気づいた。

 09年11月に作成されたはずの名簿に、(2012/2/15)という日付が印字されていたのだ。何かの間違いだろうか……

 改めて同じ名簿を請求した。すると、2度目の驚きがあった。今年3月に開示された名簿には (2009/11/9)の日付があり、12年に開示された名簿に見当たらなかった「綴じ穴(フアイルするためのパンチ穴)」の跡が写っていたのである。

 全く同じ請求に、異なる書類が開示されることなどあり得ない。情報公開請求という国民の権利を根幹から否定するからだ。

 この2種類の名簿は、検審について「当初から指摘されていた疑惑」をさらに深める新証拠ではないか。

 名簿の問題を読み解く前に、小沢事件と検音の関係について簡単に振り返っておく必要があるだろう。

 政治資金規正法違反で告発された小沢氏を、東京地検特捜部は10年2月に嫌疑不十分で不起訴とする。それを覆したのが「市民」から選ばれた検事だった。

 検察の「不起訴」決定に対する不服申し立てを受けて、間もなく東京第5検審の審査が始まり、4月と9月に、それぞれ11人の審査員は「起訴相当」の議決を下した(強制起訴には2度の「起訴相当」議決が必要となる)。

 それに従って翌11年1月に小沢氏は強制起訴され、無罪が確定する12年11月まで、

「刑事被告人」として政治活動を制約される。検審の強制起訴は、日本の政治を大きく左右する重大なファクターだったといえる。

 しかし、それほどの重責を担った検審には、当初から疑惑が囁かれていた。「審査員は実在していたのか」「架空議決ではなかったのか」──というものだ。

 検審の審査員は国民(有権者)から抽選で選ばれるが、審査の議事録はもちろん、どんな人物が審査員を務めたのかさえも一切公表されない。

 それでも「疑惑」が囁かれた理由は次のようなものだった。

 まずは「審査員の年齢」だ。検事事務局は2回目の議決(10年9月)を行なった審査員の平均年齢を当初は「30・9歳」と発表したが、「驚くほど若すぎる」と指摘されると、小学生でもできる計算だというのに、検審事務局は「間違いがあった」として「33・91歳」、さらに「34・55歳」と2度も修正した。が、東京都の有権者の平均年齢は52歳だから、修正後であっても不自然に若すぎる。

 しかも違うメンバーで行なわれた1回日の議決(10年4月)の審査員平均年齢も「34・55歳」と修正された。約1000万人の都内の有権者から無作為に11人を2回抽出し、いずれも平均年齢が34・55歳になる確率は、統計の専門家によると100万分の1以下だという。

 もう一つ挙げてみよう。

 2度目の議決日(9月14日)は、小沢氏が出馬した民主党代表選投票日で、投票の約30分前に「起訴相当」が議決されたことも不可解だった。そのわずか6日前(9月8日)、主要6紙が横並びで「小沢事件の2回目の審査が本格化した」「10月下旬に議決が出る公算」と報じたばかりだっただけに、〝迅速すぎる議決〟には「小沢氏の手足を縛る狙いがあった」「議決がなされたかさえも怪しい」との指摘が相次いだのだ。

 お断わりしておくが、ごく普通のサラリーマンだった私には、小沢氏個人や小沢氏の政治活動との接点があるはずもないし、同氏を政治的に支持する立場でもない。それでも、特捜検察が不起訴にした事件を、法的知識のない一般市民が「起訴相当」としたことに違和感を覚えざるを得なかった。何しろ、小沢事件は検察が手抜き捜査した末の不起訴ではなく、「政治介入」批判を覚悟の上で、なりふり構わぬ捜査の末に起訴できなかった案件だ。にもかかわらず小沢氏は検審に強制起訴され、しかもそこには前述のような「あり得ない説明」や「不可解な動き」がつきまとう。

 そこで私は情報公開請求を繰り返し、最高裁や検事事務局に何度も足を運んだ。

そして、それで判明した数々の疑惑を『最高裁の罠』にまとめ、その後もブログで公開してきた。その過程で遭遇したのが、「2種類の黒塗り名簿」だった。