放医研の田上

先日の記事で、汚染米を精米し研ぐとセシウム7割除去、というのを取り上げたが、その研究を発表した放射線医学総合研究所(放医研)の田上という女性研究員が、今日の、朝日新聞朝刊の記事にコメントを寄せいていた。
 
プルトニウム241が福島第1原発から20~30キロから離れた地点の土壌から検出された、という報告に対して、田上研究員は、大したことはない、放射能被曝を気にすることはない、という原発推進派らしいコメントをしていた。
 
たとえ少量といえども放射能被曝は生体にとって悪影響がある、というのが現代科学の到達点である、と京大の小出さんが繰り返し主張しているが、私は、これが真実であろうと考える。
 
半ば常識であるが、今回の報告は、プルトニウムだけではなく、数多ある放射性物質が、広範に放出された可能性が極めて高く、事態は、大したことがない、と言える状況ではないのだ。
 
たぶん、この田上という人物の、安全である、心配ない、という根拠は、原子力推進組織のIAEAICRPの、疫学データ、それも、原子力推進派にとって都合のいいように処理された研究結果に基づくものであろう。
 
田上研究員によく考えて欲しいのは、すぐに死なない、すぐに影響が出ない、影響を客観的に評価することが難しい、という放射能被曝の特性を利用して、あたかも安全であるかのような錯覚を抱かせるような発言を繰り返すことが、いかに犯罪的であるか、ということだ。
 
低線量の長期間にわたる被曝の影響に関しては、十分な研究がなされておらず、しかも、その研究のもととなるデータは、広島と長崎の被爆者から得た限られたデータしかないのだ。
 
このデータ、問題なのは、当時、低線量、つまり、爆心地から距離がある地域における放射線被曝の影響について、十分なデータを収集していないということだ。
 
米国は、軍事的に問題となる、爆心地から近いところ、すなわち、放射線量が高いところで被曝した人間の健康に、最大の関心があったのだ。
 
その理由は、爆撃地点で軍事行動を行うときの、米国兵士の放射能被曝による健康被害を知りたかったからである。
 
この米国の調査は、医学的なケアはまったく行われず、ただ、日本側の協力者と共に、聞き取り調査を行うという性格のものであった。
 
このような理由から、田上研究員やICRPが根拠としている、被曝による健康被害に関するデータは、不完全なものであり、その後、原子力従事者の被曝データが若干付け加えられたが、それにしても、低線量被曝の影響に関しては、いまだに不十分な知見しかないのだ。
 
なぜなら、人体実験をするわけに行かないからであり、もっと言えば、今回の福島第1原発事故による住民の被曝は、放射線障害を研究する医学者にとっては喉から手が出るほどの貴重なデータなのである。
 
こういった背景を踏まえて、いまだに、低線量被曝を、心配ない、と宣伝する田上などの原発推進派は、私には、悪魔のしわざ、としか思えないのだ。
 
5年後、10年後、多発するだろう甲状腺ガンなどの健康被害を、彼ら原発推進派は、ファクターを操作して、疫学的には放射能被曝による影響とは考えにくい、あるいは、少ない、という結果を導き出すだろうことは、容易に想像できる。
 
複数のニッポン人研究者が、チェルノブイリ原発事故による放射能被曝の調査に関わったが、その多くが、原発推進派であり、データを操作し、放射能の健康への影響をなるべく小さく見せることに荷担した。
 
原発推進に手を染め、米国などの核保有国に、卑屈なまでに協力して使いっ走りとして働くニッポン人に問いたい、人命とはどれくらい尊重されるべきものか、正義とは何か、そして、人間としての幸福とは何かと。