「世界」で、小出氏を特集

原発問題の特集が、岩波の「世界」であります。簡単ではありますが、紹介いたします。

『世界』2011年6月号の原子力特集に小出裕章氏

特 集 原子力からの脱出
【レベル7の危機】
ブラックアウトは何故起きたか
小出裕章 (京都大学原子炉実験所)
 3.11以降、「問題はない」「大事故ではない」と言いつづけた「原子力村」に属する「専門家」への信頼が失われるなかで、アカデミズムの立場から批判的に原子力とかかわりつづけてきた筆者の発言が注目されている。いったい福島原発で何が起きたのか。これからどうなるのか、どうすればいいのか──。批判的知性による検証。
こいで・ひろあき 京都大学原子炉実験所助教。著書に『隠される原子力・核の真実──原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社) 『原子力と共存できるか』(かもがわ出版) など。

本記事についての小出氏のメッセージ(転載)
 原子力発電とは、ウランの核分裂反応を利用した蒸気機関である。今日標準的になった100万kWといわれる原発では1年間に1トンのウランを核分裂させる。広島原爆で核分裂したウランは800gであったから、優に1000倍を超える。原発は機械であり、事故を起こさない機械はない。原発を動かしているのは人間で、間違いを犯さない人間はいない。電気を多量に消費するのは都会だが、万一の事故のことを考えれば、原発を都会に立てることはできなかった。そこで、原発は過疎地に押し付けられ、厖大な電気を使う豊かな生活のためには「必要悪」と言われてきた。私は40年間、いつか破局的な事故が起きると警告してきた。何とか破局的な事故が起きる前に原発を止めたいと願って来た。しかし、福島原発事故は起きてしまった。現在進行中の事故を収束に向かわせるため、今後、多くの作業員が被曝する。周辺の多くの人々も、歴史を刻んできた土地を捨てて避難するか、被曝を覚悟で住み続けるか選択するしかない。それを思うと、言葉にできない無念さがある。
 これほどの悲劇を前にまだ原発が運転され続けていることを、信じがたい気持ちで私は眺める。世論調査では、停電すると困るので原発は必要とする人が多数いると言う。もし、享楽的生活を続けるために電気が必要と言うのであれば、原発は是非都会に作って欲しい。それができないのであれば、電気が足りようと足りまいと原発は即刻全廃すべきものと私は思う。
小出裕章 (京都大学原子炉実験所)