プルトニウム、国民が選んだことだが

今回の大震災で激しく破壊された福島第1原発では、放射能漏れをなんとか押さえ込もうと、懸命な努力が日々行われている。
 
まさに、現場では、懸命、な状況だと思う。
 
枝野官房長官が、いくら身体に影響がない、と言っても、食品の摂取制限や避難命令が矢継ぎ早に出される状況を見れば、まともな感覚の人なら、かなりやばいぞ、と考えるだろう。
 
温度が上がりました、はい、水をかけておしまい、というふうにいかないのが原発であり、生成された放射性物質はなくるどころか、ものによって、何十年、何万年、も放射線を放出し続ける。
 
体の表面に付いた放射性物質は洗い流せばよい。
 
憂慮すべきは、空気、水、食料などを介して体内に取り込まれた放射性物質が、放射線を放出して、人体の組織、細胞を傷害することである。
 
報道では、ヨウ素セシウムのことしか話題にならないが、原爆の原料である、プルトニウムという極めて毒性の強い放射性物質のことに関しては、全く報告されていないことに気がついた
 
今回の原発事故で何が問題かというと、第3号機は、MOX燃料を使用しているからだ。
 
MOX燃料とは、原発で生成されたプルトニウムを取り出して、それを通常のウランを主成分とした燃料に混合したものであり、プルサーマルなどという耳障りのいい名称で国が推進している、核の再利用(エコだということらしい)、の根幹をなすものである。
 
当然、MOXにはプルトニウムが高濃度に含まれているわけであるから、クリーンどころか、非常に危険な燃料、なのである。
 
プルトニウムの濃縮や運搬、再利用、に関しては、国際的に批判があるが、日本政府は国策として推進してきた。
 
東京電力管内では、今回壊滅的な打撃を受けた、福島第1原発の、まさに、3号機にて使用していたのだ。東電に関しては、他の原子炉では使用していないようである。
 
国内ではその他に、北海道、中部、関西、四国、九州の各電力会社で使用されている。
 
この猛毒を含むMOX燃料を使用した原子炉の危険性は、他の通常の核燃料に比べて高いことは誰でも理解できることではあるが、これを容認、いや、推進してきたのも、我々国民の意思、ということになるのだ。
 
国民が選んだ、危険な道、なのである。
 
一般国民にはどうすることもできない事態であるが、重大事案を安直に選択してきた国民にも大いに責任がある。
 
繰り返しになるが、これまでの推移を見ていると、悪化こそすれ、改善の兆しが全くないことから、東京都を含めて、原発周辺地域の住民には、相当の覚悟が必要と考える。
 
こういう言い方は不安を煽るという批判を受けるかもしれないが、国家権力による根拠不明な楽観論に惑わされることなく、自分の身は自分で守ることが、今後必要となるだろう。
 
東大教授を中心とする専門家による解説はあまりに楽観論が多く、だったら、こんな規制はしなくてもいいのではないか?と誰しも感じるだろう。
 
この原発事故は、その規模とプルトニウムを使用しているという状況から考えて、相当の覚悟が必要なレベルであることは間違いないだろう。
 
なるべく被爆しない手だてを各人で講じるしか、現実問題としては、対応策がないのである。
 
この広範な地域を放棄するわけにいかないのだから。
 
 
追記:ニューヨークタイムズでは、3号機でMOX燃料が使用されていることと、その危険性が極めて高いという事実が報道されています。日本の新聞は報道なしでしょうかね、不安を煽ってはいけないということで。