国是は無視か

この度の、航空自衛隊トップ、田母神空将(退職)論文の経緯が明らかになるに連れて、政府が、二枚舌を使っていたのではないか、と感じる。

政府というのは適当ではないが、日本の中枢にいる者の中に、思想的に戦前(正確には、軍部独裁、大陸進出を目指した時代)を好ましいと考え、それを実現しようとする勢力があるのではないだろうか。

卑怯なのは、今回の件でも、国家の中枢にいながら、国是を無視し、自分勝手な思想を軍隊内に巻散らかそうとしたことだ。

そこまで確信があるなら、立場を考え、辞職し、自由人となり、堂々と、自説を主張すればいいのだ。

ところが、田母神なる人物はこれが出来なかった。

自分の立場、権力を最大限に利用し、自分の身勝手な思想を、隊員に流布しようとしたのだ。

そして、それを側面から支援したのが、あのアパグループだ。

これらの行動は、自衛隊内では、堂々と行われていて、要所で、当然ストップがかけられてしかるべきことが、フリーパスで通っており、政府が容認していたとしか思えないのだ。

このところ、自衛隊は妙に元気だ。

コイズミが総理になった辺りからだと思う。

その延長線上に、今回の論文問題があり、身勝手な思想性に歯止めをかけなかったことが、その背景にある。

誰が歯止めをかけるかだが、当然、自衛官の上級者であり、文民である防衛省大臣であり、最終的には内閣総理大臣な訳だが、それらが、みな、消極的だったとしか思えないのだ。

以前も書いたが、国の基本を、一個人、特定の組織の身勝手な思想で歪めてはならないのだ。

この基本中の基本が理解できず、自分の立場を全く考えることが出来ないオトナを育ててしまったことが、敗戦に起因する、戦後教育の、戦後社会の最大の反省点かもしれない。

正々堂々と自説を披瀝するのは、何のとがめもない。

ただし、自分の立場を最大限に利用し、影響力を行使しようとしたことが、あまりに厚顔無恥で、この空将と、そのシンパの幼稚な思想性が丸見えなのだ。

それにしても、高級官僚を狙ったテロや、この論文問題の根底にある日本の正当性をあくまで主張するという態度にしても、なにか、強引かつ偏狭で、息苦しくなる。

歪んだ社会にかじを切ろうとしている前兆なのではないだろうか。