iPS細胞

京大の、山中グループによるヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の成功が、大々的に報じられています。

同じ京大で、中辻グループによるヒトES細胞(胚性幹細胞)の樹立が以前成功しましたが、倫理の問題から、ES細胞の研究は、足止め状態とまでは言いませんが、やりにくそうです。

iPS細胞は、皮膚細胞に4種類の遺伝子をウイルスを使って導入し、人工的に幹細胞を創出するという、画期的な仕事です。

マウスで成功していたので、ヒトでも、時間の問題でしたが、山中グループは、世界に先駆けて、成功しました。

色々な細胞に分化可能な幹細胞は、今流行の再生医療の切り札として、世界中から注目されています。

とくに、ES細胞ではヒトの卵細胞を使うことから、色々な障害がありましたが(慎重な議論が必要と私は思いますが)、iPS細胞なら、ES細胞で問題とされる点は、避けることが可能です。

あのカトリックの総本山からも、祝福を受けるほど、iPS細胞の成功は、人類にとって、大きな希望なのです。

しかし、iPS細胞とて、問題がないわけではありません。

導入した遺伝子が、どのように機能して幹細胞になるのか、まだ完全には分かっていないのです。

導入した遺伝子の1つはがん遺伝子のmycで、この遺伝子の機能はかなり研究されてますが、他の遺伝子との関係がどうなっているか、など肝心なことが不明なのです。

また遺伝子の皮膚細胞への導入に、ベクターとして、ウイルスを使用している点も、引っかかります。

ウイルスは、遺伝子に予測不能な改変をもたらす可能性があるからです。

使用されているウイルスが原因と考える異常も(発ガンなど)、マウスの実験では報告されています。

ということは、とんでもないモンスターが出現する可能性だってあるわけで、慎重な分析が必要と、私は考えます。

さらに、iPS細胞をある種の細胞(例えば神経細胞)へ分化させることは出来ても、それを三次元的に構成して、組織や器官、臓器を構築することは、未だ不可能なのです。

私は、研究を加速させ、相当な投資を行えば、再生医療への応用が可能と考えていますし、大いなる期待を持って、iPS細胞の研究の発展を願っています。

相当な競争が予想されますが、くれぐれも、マイナス面を隠さず、堂々と研究を発展させていただきたい。

それにしても、ヒトの体って、すごいと思います。

苦もなく、色々な細胞を創り出し、三次元的に構成し、体を造ってしまうのですから。

果たして、人類は、神の領域にどれだけ迫ることが出来るのでしょうか。