マジソンバック

マジソンスクエアガーデンバックを知っている人は、私と同じ70年代を高校生として過ごした人たちだろう。

マジソンスクエアガーデンバック(通称、マジソンバック)は、当時、高校生の必須アイテムだった。バックにはMadison Square Garden と大きく書かれていて、アメリカを象徴する場所の名前が、妙におしゃれに感じさせた。高校入学当初は革の鞄を使っていたが、ダサイ革の鞄は程なくしてお蔵入りし、代わって、マジソンバックで登校するようになった。マジソンバックはかまぼこの断面のような形をしたビニール製で、新品の時には揮発性の独特な臭いがした。少なくとも白と紺の二色があったと思う。模造品も含めて、その後色々なバリエーションが出来た。

私は最初は紺を使っていたが、それが壊れると、白にした。このバック、私の扱いが悪かったのかもしれないが、結構簡単に壊れた。とくに、バックの縁からマジソンバックの型を決めているプラスチックの骨がよく飛び出してきた。最初、自転車の荷台にバックをくくりつけて通学していたが、ひもが外れて自転車の後輪にバックごと巻き込まれ、白いバックが傷だらけになってこともあった。その後、マジソンバックをハンドルの一部に引っかけるようにして通学する方法を編み出した。

江戸高生の多くが、このバックを使っていた。同級生の中には、何も入らないだろうと思われるくらいバックをわざとぺちゃんこにしているやつがいた。それがおしゃれだったらしい。

マジソンバックを何個か使い続けているうちに、めでたく卒業となったが、予備校や大学ではマジソンバックはまったく見かけなかった。いったいどれくらいのマジソンバックがこの世に存在したのだろう、あの当時。