うそつきは科学者のはじまり?

東大工学部の教授による、遺伝子関連の研究の真偽が問題になっている。東大の内部調査では、実験が再現できなかったらしい。つい最近、韓国でも、研究成果のねつ造が大問題になったばかりだ。

問題の東大教授は、「ネイチャー:Nature」という世界的に最も権威のある科学雑誌を始めとして、有名雑誌に12報も続けて論文が掲載されたという、凄腕の研究者だ(業績からするとそうなる)。

昨今の業績評価から言うと、それだけで十分に大学教授になれる。いや、十分すぎて、お釣りが来るほどだ。IFという評価法で、評価値は200を軽く越え、300近くになるだろう。

僕が以前所属していた研究室の話で恐縮だが、ネイチャーに一報載るだけでも、何年も費やし、ずいぶん苦労した。途中で研究を放棄しそうになったこともあった。

それが、ごく短時間に立て続けとなると、すごいの一言だが、ちょっと待てよ、そううまくいくものか、とも思ってしまう。

なぜ、この東大教授の研究に関して、疑惑の目が向けられたかはわからないが、単独の研究室で、そう、ホームランがでるとは確かに信じがたい。関係者からのたれ込みかもしれないが。それと、競争の激しい分野では、必ず競争相手が追試するので、ウソなら簡単にばれてしまうのだが…。

思うような結果が得られないために、自分を追い込んでしまい、ついつい悪魔のささやき(データのねつ造)にのってしまう者もいることは確かだ。

また、実験結果に再現性が乏しく、思うようなデータがとれない場合、例えば、15回同じ実験を繰り返し、その内、5回、自分のねらい通りのデータが得られたら、それを論文にしてしまう、という事例も聞いたことがある。残りの10回のデータは無視してしまうのだ。5回は再現できたから正しい、と自分を説得するのだろうか。

僕も、実験の再現性については、何時も頭を悩ませているので、その精神状態は理解できるが、グッと踏みとどまって、やせ我慢している。

実験結果のねつ造は何時の時代でもあったはずだ。最近の科学者は、倫理観が乏しくなりつつあるのだろうか。それとも、不正を暴くシステムがうまく構築されつつあるのだろうか。以前より、たれ込み(いささか悪い響きがあるが)しやすくなってきたのかもしれない。

科学研究の世界でも、不正が行われている現実を、皆さんはどう考えますか。当然と受け止めますか、人間がやることだから。