違法建築は誰の責任か?

民間企業は、利益追求がその目的だ。入りを多くして、出を少なくすれば、自ずと利益は上がる。そうなると、コスト削減のために、色々な努力をすることとなる。当然なことじゃないかな、この、資本主義の体制下においては。

民営化、民営化と、時の首相はオウムのごとく繰り返しているけど、公共性の高いものを、簡単に民営化して大丈夫か、と心配していた。そんな折り、この度の違法建築問題が表面化してきた。昔、建築の許認可は公がやっていたが、これを民間が肩代わり出来るようになった矢先のことだ。経済を考えると、今回のような事件はいくらでも起こり得るし、それを防ぐには、公が大きく関与するしかないと思う。公務員を減らし、サービスを低下させ、足りない分は自分でお金を払って民間サービスを受けなさい、というのが現在の自民党政治である。利益追求が究極の目的である民間企業に、公の責任を全面的に負わすことは無責任な考えだと私は思う。国の経済状況をあげて、訳知り顔で、自分はしっかり守られている輩が、公に頼ることはさも幼稚であるかのような言説には、心底腹が立つ。

ひねくれた意見かもしれないが、今回色々と物議を醸した小泉チルドレン達は、ほとんどか裕福層か、学歴エリートの出身で、庶民的なところがまったく感じられない。英語を操り、白人文化に精通したことを売りにする、何人かのケバイ議員先生を見ていると、生活感などという言葉はまったく無縁な感じがする。面倒なことは、お金を払って対応してきた人達ではないか?そんな感覚で、世の中を渡ってきたことを、合理的で洗練された生き方などと考えているのではないか?だから、公の事業の民営化にも違和感を感じないのかもしれない。

今一番心配していることは、国の根幹に関わる通信事業を民営化しようと躍起になっていることだ。何か偏執狂的な異常な熱意を感じる。郵政民営化という聞こえの良いスローガンのもと、郵便事業の再編と民営化を強引に推進しようとしている現政権が、公共性をどう考えているかという点だ。郵政民営化によってお宝の山を民間に分配するように見せかけているが、その裏には、その莫大な資金をマネーゲームに利用しようとする意図が見え隠れする。とくに、アメリカはこの資金に並々ならぬ関心を示しているようだ。現政権が、極端な親米政策を採っている点も、郵政民営化を舞台にしたマネーゲームを予感させると感じているのは、私だけだろうか。

私はマンション販売に関する広告を結構注意してみる方だが、今回問題になった分譲マンションは、立地や床面積の割に、安すぎると言う印象を持った物件ばかりだ。都心の利便性が極めて良い場所で、あの価格はびっくりした記憶がある。購入者は、みな、疑いを持たなかったのだろうか?早く買わないと、という思いが先行し、十分な検討をしなかったのだろうか。違法な物件を販売したものが悪いに決まっているのだが、購入者の心理をうまく利用した販売戦略だったのではないだろうか。

今回の違法建築で、被害を被った方々には、同情の念を禁じ得ないが、「安物買いの銭失い」という諺を再認識させられた事件だ。それもこれも、公が、その公の意味と自覚を忘れ去ったことに起因していると私は思う。日本は、内政も外交も、国家として危うい時期に来ているのかもしれない。