原発事故に見る、日本の常識、世界の非常識

福島原発事故に関しては、発生直後から、国内より、海外の情報の方が多く、しかも、正確である、と言われていた。
 
その理由は、国民に事態をなるべく小さく見せるための情報遮断と隠蔽がなされたからだ。
 
海外メディアは、日本国内メディアと違って、日本政府の意図に従う必要はないので、入手できた事実を自国向けに流し続けた。
 
この海外メディアと国内メディアの対応に違いが、外国の報道の方が信頼できる、という状況を生み出したのだ。
 
水素爆発で原子炉建屋が粉々になって吹き飛ぶ様子をあえて速報することなく、なるべく爆破規模が小さく見えるような画像を選んで報道したり、あるいは、ライブで原子炉を中継しておきながら、大きな変化がなかったかのような解説をしたり(NHK)、国民を欺くための情報操作、管理に、政府と東電は躍起になっていた。
 
犯罪的なのは、莫大な税金を投入して作成した解析システムを使って水素爆発後の放射能汚染を正確に予測をしておきながら、危険地域の住民を避難させることなく、相当量の被曝をさせてしまったことだろう。
 
つまり、住民を犠牲にしてまで、今回の原発事故を、なかったこと、あるいは、ほんの小さな事故、ということで誤魔化そうとしたのである。
 
国家犯罪である。
 
先進諸国、あるいは、日本周辺国では、このような日本の隠蔽体質に対して、批判と怒りが巻き起こったが、日本政府とマスゴミは、海外の批判をほとんど報道することなく、日本が哀れでかわいそうな被害者という論調で記事を書き続けた。
 
便利な時代である、いくら政府が隠蔽しても、外国の専門家の分析や反応がインターネットで手に取るように分かるのである。
 
日本政府は不実であり、地球環境を破壊する危険な国家とみなされ、その愚かしい対応に、世界が厳しい目を向けていることは明白であった。
 
以下に、今回の福島原発事故後一ヶ月半くらいの頃の、ロシアにおける事故に対する見解を、作家、評論家などマルチな活動で有名な、あの宮崎学さんのブログより転載する。
 
一部、明らかな錯誤、が見受けられるが、そのまま転載する。
 
 
宮崎学である。

友人でロシア問題の専門家服部年伸さんから教えてもらったことを紹介する。
ロシアから見た福島原発事故
福島原発事故から1ヶ月半が経過した今もこの問題はロシアで広く議論されている。ロシア政府高官たちは日本当局と東京電力の対応を批判することなく慎重な発言をしているが、一方で多くの専門家たちは日本政府と東電の対応を厳しく批判している。
批判の1点は統合司令部の欠如だ。福島では、チェルノブイリのような、政府当局、東電、地方自治体、自衛隊、核専門家による統合司令部が作られなかった。チェルノブイリでは副首相が司令部の本部長となり、彼がレスキュー・オペレーション全般の責任をとり、レスキュー作業と地元住民避難作戦に参加する全ての人間に命令を与えることができた。
福島は人的災害だと多くのロシア専門家は指摘している。彼らは地震津波も直接の原因とは全く考えていない。津波は福島第2をも襲ったが、そこで問題は発生していない。福島第1で問題が起きたのは、サポート設備の不備、事故発生当初の不適切な対応、そして、実情の隠蔽が原因だった。東電はベストを尽くそうとしたかもしれないが、その対応は混乱し鈍かった。専門家たちによれば、事故発生当初の対応には次のようなミスがあった。
第1に、原子炉内圧力が上昇すると発電所のオペレーターたちは避難し、彼らは事態が悪化する中、2日間、何もすることなく、電力復旧作業を始めたのは既に手遅れの状況となっていた3月14日になってからだった。
第2に、東電は最悪のシナリオ時に発電所のインフラ破壊を防ぐための何のプランも持っていなかった。緊急事態対応策の中には国家緊急隊、あるいは自衛隊への連絡も含まれていなかった。緊急時に経産省保安院などの当局者と地方知事に連絡する唯一の方法はファックスだけで、ファックス受信の確認を例外として電話をすることさえ許されていなかった。
第3に、事故処理“部隊”の人数があまりにも少なかった。4月初旬、その数は数百で、ロシアの専門家によれば、被爆量の制限の観点からも、経験と情報の共有の観点からも、これは全く不十分な数だった。
第4に、チェルノブイリでは住民の安全のため地域住民を強制退去させた。そのため当局は厳しく、時には軍の協力を得て作戦を実行した。それしか住民を救う手段がなかったからだ。しかし、日本では危険地域から住民に避難勧告をするだけだった。
さらにモスクワの専門家によれば、日本が提供する福島の状況に関する情報は全く信頼できないものだった。実際、彼らによれば、4月上旬、国際原子力委員会の日本代表は現状について信頼できる情報の提供を拒んだという。その日本を、福島と同型の原発を持っているアメリカは支持したという。
多くのロシア人専門家たちは、日本当局は事故対応のためのプランを何も持っていなかったと強調している。対応は全て場当たりに見え、得策とも思えないものも含まれていた。彼らの意見では、「日本当局者はチェルノブイリ事故から何の教訓も得ようとしなかった。」福島原発アメリカのプロジェクトに従って40年ほど前に建てられたもので、地震国・日本に適するものではなく、津波対策も不十分だった。「その決定要因は経済性であり、安全性ではなかった」と専門家たちは信じている。
最も批判されている点は、使用済みの核燃料が発電所の外の特別貯蔵庫に搬出されることなく同じ建物内のタンクに入れられていたことだ。ほとんどのロシア人専門家はこの事実に驚いている。福島第1の30年間の運転で蓄積された全ての使用済み核燃料が発電所内に貯蔵されていた。専門家によればこれは原子力爆弾40個を作る量となる。この使用済み核燃料が環境と接触すれば、水、土壌、大気はすぐにストロンチウムウラニウムプルトニウムで汚染されてしまう。国際的慣例では、使用済み核燃料は核燃料供給者がすべて活用処理することになっている。福島の燃料供給者はアメリカ企業だが、彼らは何らかの理由でこれらの使用済み燃料を原発運転全ての期間にわたり何の活用処理をしてこなかった。
損壊した発電ユニットに対する安全措置についても疑問の声が投げかけられている。日本当局者は損壊した発電ユニットを特別な素材でできたフードで覆うことを計画している。フードはすぐに熱で壊されるのでこれは無駄だとロシア人専門家たちは強く指摘している。彼らの意見では、これはおそらく国民を安心させることのみを目的としている。このフードは汚染された塵の拡散を防ぐものだろうが、さらに危険なのは汚染された水が土壌と海に漏れ出していることだ。当局は汚染水をメガフロートで集める計画だが、その後のメガフロートはどこに行くのか?そして集めた水をどうするのか?
ロシアでは今でもチェルノブイリは人災の代名詞だが、この1986年の事故と福島の比較は避けられない。しかし、2つの事故の環境汚染・人的被害の大小について意見はロシアでも分かれている。ほとんどの専門家は福島は第2のチェルノブイリではないと考えている。福島では燃料の露出もなければ原子炉の爆発もない。
一方、福島の影響はチェルノブイリよりも大きいと主張する専門家たちもいる。チェルノブイリでは原子炉が爆発し黒鉛が燃えた。しかし、損壊した原子炉は1つだけだった。日本では3つの原子炉と4つの使用済み核燃料プールが損壊している。放射線放出はチェルノブイリの20倍だ。そしてこの放出は1ヶ月以上続いている。
福島事故の結果、国際社会は原子力発電について統一した安全基準を作る必要があるというのがロシア人専門家の一致した意見だ。