現代の冒険というと

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冒険、よく子供の頃、この言葉を使った気がします。

それと、探検も使ったな。

現代の冒険は何か、と考えたとき、やっぱり、宇宙開発じゃないでしょうか。

その素地を作ったのは、アメリカです。

人類のそれまでの英知を、莫大なお金と人手をかけて、宇宙ロケットという巨大システムへと創り上げたのです。

じゃあ、上の写真はなに?とお思いになるかもしれませんね。

昔、自衛隊が使っていた旧式のジェツト戦闘機、F104じゃないか、と見切った方は、飛行機大好き人間ですね。

よく見ると、急角度で上昇している機体の尾翼取り付け部位に、ロケットブースターが装着されているのが分かると思います。

勢いよくロケットを噴射しているのもみえますよね。

この飛行機は、アメリカ空軍のNF104という型式で、アメリカが、有人宇宙飛行を成功させた頃、今でもスペースシャトルの着陸地として有名な、エドワーズ空軍基地に配備されていました。

この機体を操縦できるパイロットは、最高のパイロット、ライトスタッフ(正しい資質)を持った者の、さらに、頂点に君臨する者に限られていました。

NF104は、宇宙と呼ばれ始める高度近くまで飛行が可能で、空力が通用しない空間を飛ぶため、過酸化水素スラスターと呼ばれる、当時の(マーキュリー、ジェミニ、アポロなど)宇宙船に標準装備されていた、宇宙空間で使用する姿勢制御装置を、その機首に装備していました。

パイロットは、マーキュリー計画の宇宙飛行士が使用していたような与圧服(宇宙服)を着用していました。

アメリカ空軍は、これで宇宙空間での操縦感覚を、パイロットに体験させようとしました。

といっても、わずかな時間だけですけどね、その高度にとどまれるのは。

NASAに宇宙計画の権限が集約されてはいましたが、とにかく、この機体で宇宙飛行士(候補生)を量産しようと企てていたのです、空軍は。

しかし、悲しいことに、この機体は墜落して、失われてしまいました。

宇宙の縁、と呼ばれる、空気がほとんど無い高度では、NF104は、宇宙実験機として、計画通りの、満足いく性能を示したようです。

ところが、ほんのわずか空気がある高度での操縦特性を探るため飛行中、操縦不能となり、墜落してしまったのです。

空気があったことが災いしてしまったようです。

幸いなことに、パイロットは、顔にひどいやけどを負いながらも、射出脱出で、生還しました。

そのころ、アメリカは飛行機ではなく、カプセルを使用して、有人宇宙飛行をたてつづけに成功させていました。

宇宙飛行士は、一躍アメリカの英雄として、名声と富を手にしました。

でも、その基礎を作ったテストパイロットと、日常的に、宇宙空間に行っていた最高のテストパイロットたちは、宇宙飛行士たちを取り巻く喧噪の外にいて、黙々と、宇宙飛行をこなしていました。

おもしろいですね、カプセルに乗って、宇宙にいった者は英雄で、高性能ロケット実験機で、宇宙を飛行し、自分の操縦で、地上に着陸していた者は、全く顧みられることはなかったのですから。

NASAの、マスコミを巻き込んだ宣伝で、そんな状況が出来上がってしまったのです。

上の写真には、サインがあります。

音速の壁を、水平飛行で初めて破った最高のパイロット、数々の栄光に彩られた伝説のパイロット、チャック・イエガーのサインです。

そうです、彼がこの最高の飛行機を操り、宇宙への挑戦を、敢行したのです。

なんとも、わくわくして、血湧き肉躍ります、この人のエピソードを読むたびに。

そうそう、この前、ハドソン川に、見事な着陸を決め、一躍英雄となった旅客機の機長も、交信記録から察するに、イエガー流のしゃべり方だったように思えました。

アメリカのパイロットは、誰が最高のパイロットか、正しい評価を下していました。

そして、いつの日にか、その伝説のパイロットの口調をまねて、交信するようになったようです。

私は、件の機長も、F4ファントムの戦闘機パイロットだったという記事を読んだとき、瞬時に、ライトスタッフという言葉が閃きました。

その後、交信内容と、その録音が公表されましたが、そのしゃべりというか、アクセントが、イエガー口調だったことに、感動を覚えました。

イエガー流のクールさと、田舎っぽさは、アメリカ人パイロットの間で、健在のようですね。

現代の、最高の冒険を支えた、真のライトスタッフを持つ最高のパイロットが操縦するNF104の写真は、神々しくもあります、飛行機好きの私にとっては。