主権者を欺きTPP交渉参加に突き進む安倍晋三氏

植草一秀氏の『知られざる真実』より引用。
 
 
アベ一味が、TPPで何をしようとしているのか、そして、その結果として、無垢で短慮、そして、思考することを嫌がる一般的なニッポン人がどんな目に遭うのか解説されているので、ぜひ、ご一読願いたい。
 
記事の引用、ここから。
 


 

2013年3月10日 (日)

主権者を欺きTPP交渉参加に突き進む安倍晋三

TPPに関連して、中日新聞(東京新聞)が重要事実を明らかにした。

TPP交渉参加国の先行9ヵ国が、後発参加国であるカナダとメキシコに対して、交渉権を著しく制限した条件を課し、後発国はその条件を承諾した念書をTPP交渉参加国に提出していたこと。

さらに、これらの事実が極秘事項として隠蔽していたこと。

これが明らかにされた。

この重大事実は野田政権時代にすでに把握されており、昨年12月の政権交代時点で安倍政権も確認していたとされている。

交渉参加後発国は、すでに合意に達した条文を受け入れ、交渉を打ち切る集結権もなく、再協議を要求することもできない。

この不利な条件をカナダ、メキシコは受け入れ、念書を交わし、これを極秘扱いにしてきた。

この事実関係を日本政府は把握していたが、国民にはまったく公表してこなかった。

国民にこのような重大事実を知らせずに、安倍政権はTPP交渉参加を強行しようとしている。
これは、国民に対する背信行為である。

安倍晋三氏が率いる自民党は、先の総選挙で、TPP参加について、極めて慎重な姿勢を示していた。

「聖域なき関税撤廃を前提とする限りは、TPP交渉には参加しない」

とも言っていたが、自民党が主権者に示した約束はこれだけではない。

(1)「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対。

(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。

(3)国民皆保険制度を守る。

(4)食の安全安心の基準を守る。

(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。

(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

の6項目を、政権公約を取りまとめた文書のなかに盛り込んだ。
 
自民党の選挙ポスターには、

ぶれない!・TPP断固反対!・うそつかない!

の文字がはっきりと書きこまれていた。

ところが、安倍晋三氏は、日米首脳会談で、

「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」

ことが確認されたとして、TPP交渉への参加を表明する方向に突き進んでいる。

「あらかじめ約束」はしなくとも、「結果として」すべての関税を撤廃することになるなら、意味は同じだ。

日本の国民は「プロセス」ではなく「結果」を注視しているのだ。
 
安倍氏はTPP交渉に参加して、日本に有利な条件を引き出すと主張しているが、カナダとメキシコの事例は、これが不可能であることを意味している。

何よりも問題なのは、このような重大事実が隠蔽されてきたことである。

この重大事実が「極秘事項」であるから公表できなかったとするなら、政府がこの情報を掴んで進む道はまったく逆である。

日本が交渉に参加しても、日本の主張が受け入れられる余地が小さいなら、TPP交渉に参加することを見送る方向で検討を進めるべきだろう。

日本の国民にプラスになるなら参加すればよいし、マイナスになるなら参加するべきでないことは当然だ。

安倍政権の基本姿勢が糾弾されなければならないのは、日本国民にとってはマイナスが大きいことを把握しながら、なお、参加の方向に突き進もうとしていることだ。

これは、「売国行為」としか表現しようのないものである。
 
安倍氏オバマ大統領との会談で発表された日米共同声明は次のものだ。

「両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
 
日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
 
両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。」
 
日本の行動については、

「「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになる」

「TPPの高い水準を満たすことについて作業を完了する」

とくぎを刺される一方で、米国が強い関心を持つ自動車と保険についてのみ、「残された懸案事項に対処」と特記された。

米国は、自動車関税の撤廃に抵抗している。また、日本の保険部門について、「健全で透明な規制環境」を求めている。

具体的には、政府が関与する「かんぽ」、相互扶助組織である「共済」制度の撤廃を求めているのだ。

「傍若無人」とはこのことを言う。米国の自己中心主義に対して口を差し挟めない日本政府は、米国の家来に過ぎないのだ。

日本はTPP交渉に参加するべきでない。安倍氏が強行突破を図るなら、この政権を早期に退陣させねばらない。